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ささやかなきっかけ


 きっかけは本当に些細な事だった。
 どっちが先に家に帰っただとか、宿題を終わらせただとか、より褒められただとか・・・・・・
 それが何かにつけての張り合いに発展し、何で競争するのかへと主旨が変わった。
 夏だったのがまずかった。
 どれくらい西瓜を食べられか。
 アイスをたくさん食べたのはどっちか。
 ジュースを何杯飲んだか。
 その結果がどうなるかなんて子供には及びも付かない。
 でも大人達には判っていたから僕と義姉の競り合いをくすくす笑って見ていた。
 大人達?
 義父とその友人だ。
 張り合っている相手は義父の最愛の娘で僕とは同い年だ。
 賢くて気が強くって簡単には折れないがとても優しい。
 それで僕はこの家で孤独を感じずに済んでいる。
 義父も優しい。
 優しいから賢いとは言え、まだ小学生の娘と養子の僕がくだらない張り合いの結果、しょっちゅうトイレに間に合わなくて服を汚してしまったりベッドを濡らしてしまったりしても怒らなかった。
 この家の方針は、なんてったって「子供のうちにしか出来ないことは楽しむべき」なのだから。
 僕たちはここ数日をお尻もシーツもびしょぼしょにしてがっかりした顔で、或はしょんぼりとした顔で目を覚まし、申し訳なさと恥ずかしい気持ちでいっぱいになりながら失敗の報告に行くのに大人達は思った通りだ、と笑うだけ。
 義父は「毎日君たちのトイレの失敗の為に働いているんじゃないんだけどね」と苦笑まじりに言いはするけれど叱りはしない。
 濡れたお尻でもじもじとしている僕たちに
「今度はどっちが大きいおねしょをしたかで競争する?それとも回数?」
 と言われれば負けず嫌いの彼女は今夜こそしない!と鼻息を荒くし、僕は自信もないのにその勢いに引きずられて「僕も負けない」と頬を膨らませる。
 でも大人達は結果が判っているのだ。
 頑張ってね〜〜と嘘くさい微笑みで答えたり、明日こそお義父さんは楽になれるんだね?って言ったり完全に面白がってる。
 そして大人達は正しい。
 翌朝には二人で涙で目を潤ませ、うなだれながら大人に報告しに行く羽目になる。
 パジャマくらい自分で替えられるけど濡れたベッドはどうしたらいいのか判らないんだから情けない限りだ。でも、それ以上に僕たちは競争に夢中になり、甘やかされてる事に少しばかりの快楽を覚えていた。


 この競争が終わったのは夏が終わったからではない。
 大人たちがもう止めなさいと言ったわけでもない。
「ばかばかしい事を楽しめるのは今だけ」を信条にしている義父が僕たちの失敗をせっせと写真に収めている事が判ったからだ。
 義父は器用で撮影だって巧い。
 劇的瞬間なんかそりゃあもうバッチリ。
 大人達はその劇的瞬間を眺めて可愛い可愛いの連呼だけど写された僕たちはたまらない。
 ぎゅうっと股間を押さえてるのだって恥ずかしいのにズボンに出来た染みから、股から滴る滴までクリアに写っているもの。
 足元に出来た水たまりに呆然とするだけの姿。
 あとちょっとでトイレだったのに直前で全部出してしまった瞬間。
 お尻に同じような丸い染みを作って一生懸命言い訳している二人。
 ぐっしょり濡れたベッド。
 手で前を押さえ大泣きしながら、漏らしてる姿。
 幼稚園児みたいに上から下までの着替えを手伝ってもらってる姿。
 抱っこして貰った途端に漏らしてしまったものもある。
 これだけでも充分恥ずかしいのにこれ以上の事があるのかと思うと僕たちは耐えられなかった。
 大人達は残念がったが僕たちは取り敢えず、平和に生きる事を選んだのだった。
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