誘拐(1)

ぐちゃっと、沈んだ膝が音を立てた。
茜は、その嫌な感触で我に返る。
耳に、ばちん、ばちん、という音が響いた。
その度に身体が揺れる。
ぐちゃっと膝が言う。
少しだけ開いた膝の間に出来た、布団の上の水たまりは熱を失い、黄色みを帯びると共に、異臭を放った。
部屋に響く音は、自分のお尻が鳴る音だ。
最初は痛く、泣き叫んだ茜だが、時間が経った今、痛みは痺れに変わっており、膝にまつわる感触の気持ち悪さの方が辛くなっていた。
布団に出来た己の排泄物は、前に着いた両手の所まで届いている。
「反省してるの?!」
すぐ後ろで苛立った声がする。
毎日の茜のおねしょにすっかり腹を立てている姉だ。
茜は何も答えられなかった。
ただ、情けなかった。
ぼんやりと自分の作った水たまりを見つめるしかない。
その時・・・・・・・・

「あっ!」

太腿に痛みが走った。
茜の無反応な素振りに苛立った姉が、平手を打つ場所をまだ痛みを受けていない場所に変えたのだ。
痛みに耐えかね、身を反らせた茜のお尻がぽっと温かくなった。
かと思うと、足の間からぱたぱた言う音がした。
布団の上の水たまりに滴が跳ねる。
お尻に掛けられた下着に生温かいものが伝わり、やがて布団についた膝にまで広がった。
しゅぅぅぅぅぅぅぅ・・・・・・・
じょろろろろろろーーーーーーー
静かな部屋に音が響く。
茜の視界に、湯気を立てて広がる水たまりが見えた。
出す物を全て出し切るまで、しばらくの間があり、それから茜は嗚咽を上げて泣いた。
姉はもう何も言わなかった。
黙って部屋を出て行く音だけがする。
茜は泣きじゃくりながら、お尻にパンツを引っ掛けたまま、濡れたパジャマのズボンを引きずってシャワー室に行った。


今日は家に入れてもらえないかもしれない。
茜はどんよりとした気持ちで登校し、一日を過ごし、帰宅の道に着いた。
結局姉は一言も話してくれなかった。
文句も言わなかったが、いってらっしゃいもなかった。
とぼとぼと歩いていると、小さな女の子の泣き声がどこからか聴こえて来る。
そっちの方へ歩いてみると、小学校二年生くらいの子がお尻をびしょびしょにしてドアを叩いていた。
ドアの向こうからは母親とおぼしき女性の声で、もう知りませんとか、何度言ったら判るのとか、罵しる声がする。
少女は泣きながら詫びていたがドアの向こうの声は聞く耳持たずだ。
他人事ではない光景に、茜は身をすくめながら家の前を通った。
その茜と少女の目が合った。
少女は一瞬びくっとしてお尻を隠した。
茜は思わず、おいでおいでをした。


「さあ、足を上げて」
デパートの公衆トイレで茜は女の子のパンツを着替えさせた。
女の子はゆうなと言った。
「お姉ちゃんも今日はおうちに帰れないの。
一緒に隠れ家に行く?」
ゆうなは、隠れ家?と目を輝かせて茜を見た。
「うん・・・・・」
そこは、借り主の見付からない家だった。
何故か鍵が掛かっておらず、中も奇麗なので茜はたまにこっそり使っていたのだ。
水と電気は使えないので、トイレは公衆トイレ。
水は持ち込み、電気は非常灯を持ち込んである。
100円ショップのクッションをみっつ買って、ゆうなちゃんの布団として当てがった。
二人ともおねしょやおもらしの事は話さなかった。
コンビニのおにぎりで夕飯を済ませると、銭湯でさっぱりして、二人は隠れ家に戻り、漫画雑誌なんかを読んで時間を過ごした。
外は満月で、街灯の灯りも差し込んで来るので、さほど灯りには困らなかった。
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