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ぽん!

台所を片付ける皇子のつやつやの、襟足より少し長めの黒髪がリズミカルに踊る。
 彼の黒髪は見た目は柔らかそうなのだが少し硬めなせいで、始終どこかで毛先が踊るのだ。
 海軍の大艦隊艦長は、襟元を緩めながらその動きを見ていた。
 幼い頃から皇子というだけで命を狙われたりもした彼だが、素直にすくすくと育っている。
 同じ年頃の青年からするとやや小柄でまだ少年という感じも否めないが健やかなのだからそれもよしだ。
 その横で背の高い、海洋という細身だががっしりした身体付きの、ウェーブの掛かった長い黒髪の青年が優しげな目付きで少し体を屈め、皇子に何か指示をしている。
 皇子はそんな海洋に素直に頷いていた。
 海洋は何を隠そう、皇子の生命を狙っている一人だ。
 一度邪魔が入り、しかもその後その依頼は消えたのに任務を完了出来なかった事を悔しがった彼は今後も皇子の命を狙う事を宣言し出した。そして呆れた事に「他の奴に皇子を渡したくない」という理由で毎日と言ってもいいほどの間隔で皇子に会いに来ていた。
 皇子は別のマンションに最近居を構えたのだが、海洋たちのせいで部屋が壊れてしまい、一時期的に艦長の元へ身を寄せていた。
 皇子も海洋も大変器用な方であっという間に贅沢ではないが豪華な食事が並ぶ。
 そこへ、足を引きずるような足音がして、塔という青年が現れた。
 皇子よりはいくつか年上だったがまだ未成年で、細いというよりはかなり痩せぎすな目付きもあまり良くない灰色の髪を持つこの青年もまた、皇子の命を狙っていたものだ。
 任務に失敗し、艦長に捉えられた時には指示を出したとされる彼の両親は姿を消し、未成年だった彼は艦長に引き取られる事になったのだが、この塔が一番の悩みの種だった。
 ややぼんやりしていて人が好いところがあるものの自分の事は自分でこなせる皇子は心配はすれこそ手は掛からない。
 海洋だって充分な大人だし、プロだからたまに冗談のキツい行動を起こす事はあっても艦長に迷惑を掛けた事はない。いくら皇子を狙って艦長の家に来ているとは言え、引くべき線はきっちりしているし信用も出来る。部下として使う事もあるくらいだしその際は非常に有能な働きを見せる男だ。
 それがこの塔と来たら口ばかり達者で自分の世話もままならない上に登校拒否に成り掛けるし誰にも心を開かないどころか会話もままならない。おはようも言わなければおやすみもなく、学校からの呼び出しなどしょっちゅうだ。
 たくさんの部下を掌握している彼にとっても塔は非常に扱い辛くままならない存在で頭痛の種でもあり、自信を喪失させる事でもあった。
 幸いにも海洋は同業者という立場を口実に力技で塔を押さえ込み怯まずに面倒を見てくれているので塔は学校には通えている。学校からの呼び出しにも進んで出向いてくれるのだから本当に有り難いものだが、そのせいで艦長は保護者としては全く無能な自分にげんなりしてしまうのだ。
 その問題の塔は、相変わらずおかえりもなくダイニングに入って来たのだが、いつものしかめっ面と違う苦痛に満ちた顔でゆっくりと歩くので艦長の目を引いた。
 どうしたんだ?と訊きたいのだが、まだ人間関係が出来ていないので気軽にそんな事も出来ない。艦長は手招きで海洋を呼んだ。
「ああ、さっき・・・・・」
 目配せだけで艦長の言いたい事を察した海洋は小声で事情を説明する。
 昨日、艦長にいつも力で押さえつけるという海洋のやり方を咎められた彼は、今朝は塔に「おしおき」をしてみることを試みた。だが精神的に弱い塔はたった二回尻を叩かれただけでパニックになり恥ずかしさで憤死し兼ねない勢いだったので海洋はこの手を使うのは止めようと考えたのだが
帰宅するなり仕返しを挑んで来たため、滅多になく逆上した海洋は止めようと決めていたのにも関わらず強引に尻を何度も引っぱたいてしまったのだ。
 塔はその痛みに耐えた。
 だがもう二度とこんなやり方はご免だと言い、 海洋も趣味じゃないと答え、仲直りをしたのだがその後の痛みには耐えられなかったようだ。
 一緒にいる時は泣かなかった塔だが、海洋が台所へと去った後泣いてしまったのだろう。
 こっそり目を見ると真っ赤になっていた。
 事の顛末を聞いて艦長は驚いたように海洋を見た。
 海洋はその艦長の前でうなだれ
「やりすぎました。ゴメンナサイ」
 と言った。
 見た目はしおらしいが上目遣いに見ているその目が本当にそう思っているのか・・・・・・
 普通の社会では生きて来なかった海洋と塔は叱られるのも叱るのも慣れてはいない。
 食うか食われるかの世界にいる者同士だ。
 そんな二人にこっちの価値観を判らせるのは時に骨が折れる。
 海洋は素直だからまだいいが、塔はそうではない。
 だが、本当に今社会での生き方を身につけなくてはいけないのは塔の方なので本当に悩ましい。
 艦長はひとつ、ため息を付くとまあいいさ、と言った。
「頼んだのはこっちなんだし」
「うん?」
 許され方も判らない殺し屋の青年はどうしたらいいのか判らないようで戸惑いの眼差しで艦長を見た。台所に戻って、と指で示すとすぐに戻る。
 その後ろで塔は座りずらそうに椅子に腰を下ろす。
 やりすぎた、というのは誇張ではなさそうだな、とその様子を眺めながら艦長は肩をすくめた。
 その向こうでは海洋が皇子に頭をこつんと叩かれていた。
 どうやら同じ話をしたようだ。
「今日はソファーでご飯を食べるか?」
 そっちの方がまだ楽じゃないかと提案してみる。
 塔はいい、と首を振った。
 返事があるのは初めてだ。
 思わずそっちを見ると目を潤ませ、時々鼻をすすっていた。
 まだ泣いている途中のようだ。
「無理はしないように」
 艦長はそれだけ言うと、新聞を拡げた。



 暗がりの中。
 幽霊が青白い顔でこちらを見ている。
 塔の顔から血の気が引き、気が付くと下半身に温もりが広がった。
 慌てて下を見るとシーツに丸い染みが出来ている。
 ズボンもびしょびしょだ。
(しまった・・・・・)
 もう泣きそうだ。
 動揺する塔の前で幽霊がにやっと笑った。



「・・・・・うわっ・・・・・・っ!!」
 塔は自分の叫び声で飛び起きた。
 肩で息をするとはっとして毛布を剥ぐ。
 ベッドもパジャマも濡れてはいなかった。
 ほっとして息を吐くとドアがノックされ、大丈夫か、という艦長の声がする。
 塔は慌ててベッドから出るとドアを開け、ちょっと怖い夢を見ただけと言った。
「そうか・・・・・ホットミルクを作ってあげるからこっちへおいで」
「?」
 何故ホットミルク?と塔は首を傾げる。
「ホットミルクを飲むと少し落ち着くんだ。まだ朝には早いからね」
 そういうと先に歩き出す。
 塔はしばらく部屋の前でぐずぐずしていたが、ええままよ、とその背中の後を追った。
「もし怖かったらここで寝てもいいからね」
 そう言いながら艦長はソファの前のテーブルに温めた牛乳を置く。
 塔は黙ってそれに口を付けた。
 相当な猫舌なので恐る恐るだ。
 艦長はその様子を眺めながら自分のカップに口を付けた。
「あの、俺・・・・・・・」
「ん?」
 艦長は塔を見た。
 彼はマグカップに視線を落としたまま口ごもると、
「ずっと人目を避けて暮らしてたから慣れないんだ。誰かといるとか、話すとか・・・・・・・・」
「うん・・・・・・」
 そうだな、と艦長は静かに相槌を打つ。
「・・・・・・誰かが近くにいるのは怖い・・・・・」
 吐き出す様に告げる。
 マグカップを包む両手が僅かに震えた。
「判った」
 艦長は視線を塔に向けたまま頷いた。
「今の君の生活については法律上の事だから仕方がない。でも、学校生活が無理なら家庭教師も考える」
 思いもがけない提案に、塔は戸惑いを覚えたように視線を彷徨わせた。
 この数週間の生活を思い返しているのか沈黙が続く。
「・・・・・学校は通う・・・・」
 彼の中でいくつかの葛藤があったようだが弱々しい答が返って来た。
「無理になったら言いなさい」
 艦長はそう言うと残りのミルクを飲み干し、ソファーに横たわり目を閉じた。
「ちょっと・・・・・・」
 置き去りにされた塔は少し慌てたが、諦めたようにため息をつくと自分も残りのミルクを飲み干し、マグカップを台所の流しに片付けると反対側のソファに身を横たえた。



「こーんなところで寝てるとおねしょしちゃうぞ!」
 頬をはたかれて目を覚ますと、朝陽の中で海洋が腰に手を当てて見下ろしていた。
「してないっ!」
 塔は真っ赤になって言い返す。
「怪しいな〜〜。さては部屋でしちゃってベッドが使えないからここで寝てるのか?」
「ちがっ・・・・・・」
 面白がってにやにやする海洋を拳で殴ろうとするがひらりと身をかわされる。
「・・・・・・ゆ、夢で見ただけだよ・・・・」
 夢の中での動揺を思い出し、思わず声が小さくなる塔。
 そう、絶対ないなんて有り得ない。
 向かい側で寝ていた艦長はもそもそと起き出すとなーんだ、と言った。
「そう言う事だったのか。
しちゃったら怒らないからちゃんと言いに来なさい。
一人で後始末は大変だろう?」
「だからしてないって!」
「判ってますって」
 その小馬鹿にした態度が気に入らないんだ!と塔は床を蹴った。
「いいからシャワー浴びて来い」
 海洋はそう言うと尻を軽くはたく。
「うっ!」
 まだ腫れが引かないのか、塔は一瞬体を反らせて声を上げた。
 おやおや、とその様子を見ていた艦長はにやにやとしながら塔の背後に忍び寄り、その尻を軽くぽんぽんとはたき、
「当分は軽いおしおきでも効き目がありそうだな」
 と言った。
 
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ライバルのおしおき

朝、その家の住人ふたりが朝食をセットしていると、乱暴に玄関のドアが開く。
現場には物音ひとつ立てることなく忍び入るという男だとは想像出来ないくらいどすどすと足音を立てるとダイニングを通過し、奥の部屋へと挨拶もなしに押し入る。
いつもの光景だが、皇子と家の主である艦長は変に緊張してその姿を追ってしまう。
この後起きる事ももう何日も繰り返されている事なのだが、やはり冷や冷やして気が気でない。
そんな二人の事など我関せず。
殺し屋を生業にしている海洋は、奥の部屋でベッドに入ったまま上目遣いに睨んでいる塔を見た。
毎朝、塔は思うのだ。
冷たい眼差しを持つ、この殺し屋の威圧的な空気には従わないぞ、と。
だが、いつも気が付くと遠慮無しに殴られ、担がれ学校に放り出されてしまう。
海洋の方は塔を学校まで持って行くとさっさとまた戻り、まだ体に緊張を走られたままの皇子と艦長の間で何食わぬ顔で朝食を取り、艦長の運転で途中の道まで送ってもらう。
それが日常だった。
その車の中で艦長が少しやり過ぎじゃないのかと咎めるのも。
だから海洋もその言葉を受け流し気味だった。
だが、今日の艦長は違った。
生返事で「そうだね」と海洋がいつものように適当に相槌で流そうとすると車を停め、海洋に車から降りる様に促した。
「なに?」
いつもと様子が違う艦長の様子をいぶかしみながらも路肩に降り、運転席から降りて来た艦長を見る。
艦長は苛立をはっきり露にすると
「このままでは塔は暴力で解決することしか学べなくなる」
と言った。
「確かに海洋には感謝している。我々には塔は手に負えないし、毎日学校に通わせる事も出来ないと思う。だが、それとこれとは別だ」
海洋は上から言われ、むっとして艦長を見た。
だが、いつもは海洋のへ理屈と威圧的な態度に圧されている艦長の一歩も譲らんとする毅然とした態度に自然と俯いてしまった。
そんな海洋に艦長の長い長い小言が繰り出される。
海洋には雇用関係がない。
親とも暮らした事がない。
艦長の説教を聞きながら、海洋は、これが叱られるということだろうかと思った。
完全に一対一という関係を壊している、このいかんともし難い敗北感。
「他にどうしろと?」
それでも負けじと言い返すと、手を出してと言われる。
「?」
よく判らぬまま利き手の逆を出す。
艦長は手の甲を上に向けさせると
「君は拷問には強いよな?」
と言った。
「多少はね」
そう答えるや否や、ぴしっと甲を打たれる。
「どうだ?」
信じられん、という顔で見上げる海洋に片頬で笑いながら艦長は訊いた。
「なんというか屈辱的だな」
耐えられない痛みではないが、と睨む。
「おしおきさ。
痛いより利く」
「へえ。俺は今おしおきされたわけ?」
艦長が車に乗り込むのを見て自分も車に戻りながら海洋は運転席に座る艦長をねめつけた。
「言っておくけどな」
艦長は車を発進させながら言った。
「俺はお前が塔に強固な態度に出る度にそういう気持ちになってるんだぞ?
まるで俺の不手際を責められてるような気になるんだ」
「あんたは関係ないだろう?」
あいつの問題はあいつの責任だ、と海洋。
「判っててもそう感じるんだよ」
上下関係もしがらみもないお前には判るまいがな、とぼやく。
海洋は、ふーーんと判ったような判らないような返事を返すと
「でもさっきのは効いた」
と言い、助手席に沈み込んだ。
彼なりの謝罪と釈明と反省してますという意思表明なのだろうが、どうしてもこう偉そうなのか。
やれやれ、と艦長はひそかにため息を付いた。


そして翌日。
塔は相変わらず部屋に引きこもり、艦長が呼んでも皇子が呼んでもうんともすんとも言わない。
取り敢えず先に朝食を食べているといつものように扉が開き、どしどしと音を立て海洋が現れ、ダイニングを通り過ぎ、奥の部屋に入って行った。
「なんだよ。
まだ暴力で解決しようってのか?」
塔はベッドの上で寝そべったままふてぶてしい態度で海洋を見る。
海洋は無言でつかつかと歩み寄ると、斜め下から見上げている塔の腕を掴み、引っ張り上げるとうつ伏せにさせた。
「ちょ・・・・・っ」
勢い良くズボンのウェストに手を掛けられ、さすがに塔は慌てた。
さっきまで強気だった表情が顔から消え、真顔になると必死で海洋の次の動きを止めようともがく。
だが、日がな一日腕の怪我を言い訳にだらだらしていた塔と違い、毎日鍛えている海洋はびくともしない。
ズボンを少しだけ下げられたかと思うと、強い平手がその尻を襲った。



二、三度塔の悲鳴が聴こえた、と思ったら激しい物音が響き、皇子と艦長は首だけで廊下の方を見た。
僅かに開いた扉の隙間から、気を失い海洋の背中に背負われ、運ばれて行く塔の姿が見えた。
「昨日の昨日の話を判ってくれたんじゃないのか?」
帰って来た海洋を車に乗せ、職場まで向かう中艦長は不満を述べた。
「結局今まで通りじゃないか」
「違う。あいつ、プライドが無駄に高くて憤死しそうになったんだ。
行き過ぎになる」
不機嫌な口調になる艦長に海洋は慌てて説明した。
「尻に二発が限度だ」
「よわっ!」
思わずそう叫んでしまう艦長。
「なんだってそんなにメンタルが弱いんだ!」
「強かったら毎日気絶させて学校になんか連れて行くことないだろう。
あれじゃあ特攻野郎Aチームのコングを飛行機に乗せるのと同じだ」
「まさか、ずっとこんなんじゃないだろうな」
「そんな先の事より今日の心配をしたら?」
眉をしかめる艦長をじろりと睨み、海洋は言った。
「もしかしたら帰って来ないかもしれない」
「俺が悪いのか?」
思わず海洋に噛み付く艦長。
「お前のやり方が合ってて、俺の意見は間違ってたと?
あいつの為にならないと?」
「そうは言ってないだろ?落ち着けよ。まだ帰って来ないと決まったわけじゃない」
普段はもの静かでおっとり坊ちゃんなこの艦長はたまに熱くなって変な方向に暴走してしまう。
それをまあまあとなだめ、無事に職場まで到着させると海洋は車を降りた。
艦長にはそう言ったものの、実際は海洋も落ち着かなかった。
留守を預かった家で家事をしながら、あいつはちゃんと帰って来るだろうかとそわそわしっぱなしだった。
夕方、ドアの開く音に玄関まで足早に出て行くと顔面に何かが投げ付けられる。
いつもなら完全に避け切るのだが、心ここにあらずだったせいだろう。
もろに真に受けてしまった。
「な・・・・・・・っ」
投げ付けられたのは鞄だった。
それなりに重みのあるそれを除ける隙に塔が飛び掛かって来た。
「・・・・・・今朝はよくも・・・・・・!!」
悔しさで顔を真っ赤にして睨みながら殴り掛かって来る塔に、海洋は何をするんだと言い掛けた言葉を飲み込んだ。
一発で殴り返すと、まだ玄関先にいる皇子をそのままにし床に倒れ伏した塔の腰を小脇に抱え、彼の部屋まで連れ込み、ベッドの上に手を付かせ、まだ荒い息を吐く塔の尻を力任せにズボン越に引っぱたいた。
「うっ!」
塔は一瞬、声を出したが耐えた。
すぐに二発目が来たが逃げなかった。
灯りも点けないままの薄暗い部屋の中、尻を打つ音だけが響いた。



何発打たれたかは判らないが、塔は痛みにもその状況にも耐えた。
今朝彼を捉えた羞恥心と屈辱感はなかった。
腹を立てていたからだろうか。
尻は痛んだが泣きたいほどでもなく、自分の意志を貫いたような気持ちで荒く息を吐いた。
「お前、結構強情だな」
海洋は静かに背中を上下させる塔を見下ろし、静かに言う。
「こんなの、お前はただ他人に言われてやっただけじゃないか。プライドがない」
塔は顔を下に向けたまま言い返した。
海洋は、ふん、と言うとその横に腰を下ろす。
スプリングが効いたベッドが大きく揺れた。
「なあ・・・・・・」
「ん?」
「・・・・・・俺、こんなやり方好きじゃない。俺が意見出来ることじゃないかもしれないけど・・・・・・」
塔はまだ俯いたままで、ゆっくりと言った。
「俺が悪いんだろう?
でも痛くても恥ずかしくても反省出来ない」
「まあ、俺も趣味じゃない。一発殴った方がすっきりする」
そう言うと塔の灰色の髪を撫でる。
「今日は俺が悪かった。でも、艦長が心配している事も判ってくれ」
「・・・・・・うん・・・・・」
「声が小さいな」
「え?」
海洋が立ち上がったので塔は慌てて上半身を起こした。
海洋はその様子ににやっとした。
やっぱり殴る方が効き目がありそうだ。
殴らずに済むならその方がいいのだが。
「夕飯の準備をするだけだ」
「俺も行く!・・・・・っ!」
塔は慌てて立ち上がろうとしたが、出来なかった。
打たれた場所が想像以上に痛んだのだ。
さっきまで気丈に耐えていたのに、目に涙を滲んで来た。その様子に海洋は笑う。
「何だ、効き目はありそうだな」
「くそ・・・・・・・」
にやにやとした海洋の言葉に塔の顔が見る間に真っ赤になった。
無理に立ち上がろうとするがやっぱり立ち上がれない。
海洋はその腕を掴み、引っ張り上げると痛みを庇っているせいで無様な歩き方になっている塔の歩みに合わせ、ゆっくりと台所に向かった。
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りろいべる

Author:りろいべる
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